中東地域における米イラン間の軍事衝突と、フーシ派による紅海での船舶攻撃が激化する中、国際基準原油であるブレント原油の価格は1バレル100ドルを突破し、5月以来の高値を更新した。主要な海上輸送路であるホルムズ海峡と紅海の両海域が封鎖または脅威に晒される事態を受け、グローバルなエネルギー供給の混乱が懸念され、株式市場は下落し、インフレ再燃と利上げへの警戒感が市場を覆っている。
イエメンのフーシ派はサウジの石油タンカーを標的に攻撃し、サウジ側もこれを確認した。これにより、通常ホルムズ海峡経由で輸出される原油の代替ルートが脅威にさらされている。トランプ米大統領はイランのインフラや紅海での攻撃に対して「重大な軍事制裁」を予告し、イラン側も米軍の攻撃が続く限り報復攻撃を継続すると宣言している。米中央軍はイラン軍事目標への連続空爆を報告し、両国の対立はエスカレートしている。この情勢は、世界原油供給の約5分の1が流通するホルムズ海峡の封鎖リスクを高め、エネルギー市場に甚大な圧力をかけている。
エネルギー価格の高騰は、物価上昇と金融政策の引き締めを招く懸念から、世界株式市場は下落した。米ナスダック総合指数は2%超下落し、アルファベット、テスラなどの「マグニフィセント・セブン」銘柄が軒並み売られた。特にアルファベットは年間AI資本支出見込みを2050億ドルと発表し、投資家の懸念を強めた。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は、中東情勢による物価上昇に対して「持続的なインフレには寛容ではない」と明言し、利上げの可能性も示唆している。また、日銀の低金利政策と米国の金利差から円安が進行し、40年ぶりの安値圏で推移している。
防衛・ハイテク企業のタレスは、中東地域での事業を加速させており、2026年後半にはアラブ首長国連邦(UAE)にレーダーセンターを開設する予定だ。同社の同地域での売上高は前年同期比36.7%増、受注高は202%増と急成長している。また、中東の貿易ルートの再編も進んでおり、イスラエルを経由しないインド・中東・欧州経済回廊(IMEC)の代替として、サウジとトルコの鉄道連携やUAEの港湾・パイプライン整備が進められている。米サウジ間の核合意の行方も、地域の安全保障環境に不透明感をもたらしている。
今後、ホルムズ海峡と紅海の輸送路が封鎖されれば、原油価格はさらに上昇し、グローバルなインフレ圧力と景気後退リスクが高まる。機関投資家はAI関連企業の巨額な資本支出と、地政学的リスクによるサプライチェーン混乱の両面から慎重な姿勢を崩していない。市場参加者は、今後の米欧中東の動向と主要企業の決算発表を注視し、需給逼迫による価格高騰が実体経済に与える影響を警戒している。