カナダのオンタリオ州などで発生した山火煙が国境を越えて北米各地を覆い、深刻な大気質危機を招いている。スイスの大気質監視機関IQAirによると、デトロイトとトロントが世界で最も大気汚染が深刻な都市にランクされ、ミネアポリスやシカゴ、ニューヨークなど米国の中西部から東部にかけて数百万人が健康被害リスクに直面している。この事態を巡り、米ミシガン州選出の共和党議員らがカナダ政府の対策不備を非難する書簡を送るなど、気候災害が外交摩擦へと発展する事態となっている。
環境カナダはトロントの大気質健康指数を「10+(非常に高いリスク)」と発表し、屋外活動の制限を呼び掛けている。山火煙はオンタリオ州西北部から数百キロ離れた地域にまで広がり、ニューヨーク州やミシガン州、ウィスコンシン州などで「有害」から「非常に不健康」レベルの警報が発令されている。ニューヨーク市では熱中症対策として冷却センターを開放し、N95マスクの配布を進めるなど、自治体が緊急対応を強化している。また、山火煙の影響でオンタリオ州では130件以上の火災が鎮火せず、数百人の住民が避難を余儀なくされている。
政治的には、米ミシガン州選出の共和党議員4人がマーク・カーニー加国首相宛てに書簡を送り、森林管理の不徹底や山火煙対策の遅れを厳しく批判した。議員らは「カナダは対策手段を持ちながら行動を避けている」と非難し、国境を越える災害防止責任を問うている。これに対しカーニー首相は、気候変動対策は米国を含む全世界の責任であると強調し、カナダのクリーンエネルギー投資と米国の政策を対比させた。専門家は、地球温暖化による大気乾燥と高温化が山火事の頻発化を加速させていると指摘し、今後、北米の夏に山火煙が定着する可能性を警鐘している。
大気汚染は社会・経済活動にも直接的な影響を及ぼしている。トロントでは大気質の悪化を受け、FIFAファンフェスティバルの開催中止が決定した。医療機関や学校は対応を迫られ、経済活動の停滞も懸念されている。専門家は、気候変動による異常気象が山火煙と熱波を常態化させ、都市部の生活基盤を脅かすと警告する。関係当局は今後も煙の滞留状況と大気質を厳重に監視し、住民への保護措置を継続する方針である。