北欧デンマークと南アジアネパールで、それぞれ長期的な政治的停滞や対外関係の転換点を示す重大な動きが相次いでいる。デンマークではメット・フレデリクセン首相が2ヶ月以上にもわたる協議の末、中左派少数連立政権の樹立に成功し、3期連続の首相就任を果たした。一方、ネパールでは、2025年の若者主導の反汚職抗議運動で前政権が倒れて以来、首相バルレンドラ・シャー氏に代わって与党幹部がインドを初訪問し、経済・戦略面での協力強化を求めている。
デンマークの社会民主党を率いるフレデリクセン首相は、3月の総選挙で12政党が議席を獲得した分裂した議会で、連立政権を構成する支持を集めることに成功した。社会民主党は得票率21.9%で38議席(定数179)を獲得したが、前回比12議席減となり、1903年以来最悪の成績に終わった。フレデリクセン首相は国王との会談後、記者団に対し「長期の交渉を経て政府を形成することができると発表した」と述べ、国民と次世代、さらには動物のための政策基盤を掲げた。連立パートナーは社会民主党に加え、社会主義人民党、中左派のラディカレ・ヴェンスレ、中道派で構成される。
新政権が直面する最大の課題は、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランド領有の公言を巡る対米関係の緊張である。フレデリクセン首相はデンマークの主権譲渡を断固拒否し、米国の主導権掌握は「NATOの終焉を意味する」と警告している。また、欧州の安全保障環境悪化やロシアのウクライナ侵攻を背景に、防衛費をGDP比3%超に拡大し、徴兵制に女性の適用を歴史的に拡大してきた経緯もある。国内では生活費高騰、経済状況、福祉不安に加え、畜産による水質汚染や気候変動対策、動物の権利といった課題への対応も迫られる。
一方、ヒマラヤの国ネパールでは、与党・ラシュティヤー・スワタントラ・パーティ(RSP)のラビ・ラミッチャーン党首が、インドを公式訪問した。2025年の反汚職青年抗議運動で前政権が崩壊して以来の高レベル訪問となるが、36歳のラッパーから政界へ転身したバルレンドラ・シャー首相自身は、就任1年間の海外渡航を避け、国内経済の立て直しや諸課題に集中する方針を示している。ラミッチャーン党首はインドのモディ首相との会談を予定しており、両国間の経済・戦略協力の深化を訴えている。
ネパールはインドと中国の二大隣国との間で微妙な外交バランスを維持する必要がある。世界銀行のデータによると、インドはネパールの最大の貿易相手国で輸入の63%(86億米ドル)を占め、中国は13%(18億米ドル)となっている。また、インド・中国・ネパールが接するリプulekh峠を巡る国境問題が再燃しており、シャー首相は議会内で双方が「侵食」していると指摘し、「友人として解決すべきだ」と述べた。この発言はカトマンズの議会内で議論を呼んだ。
両国とも、国内の経済的課題や安全保障の環境変化、そして隣国・超大国との複雑な地政学的緊張を同時に処理する局面にある。デンマークの新政府は少数政権という脆弱さを補いながら対米関係の修復と国内合意の形成を迫られ、ネパールでは新体制が対外関係をどう調整し、国内の経済再生と国境問題の解決に乗り出すかが問われる。両地域の政局動向は、欧州および南アジアの安定と経済協力に直接影響を及ぼすことになる。