イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は1日、ヒズボラが支配するベイルート南部郊外ダヒエー地区への攻撃を命令した。同国国防相のイスラエル・カッツ氏との共同声明で、ヒズボラによる休戦協定の「繰り返される違反」とイスラエル市民への攻撃を理由に挙げている。この攻撃命令は、米国の仲介による4月の停戦合意が成立した後も激化するレバノン南部での衝突を背景としており、米イラン間の和平交渉に新たな不透明さをもたらしている。
同国軍は週末、900年の歴史を誇るボーフォール城を占領し、2000年以来最深部となるレバノン南部への侵攻を完了させた。これにより、リタニ川以南の約2000平方キロメートルが実効支配下に入った。ヒズボラは自爆型ドローンやロケット弾での反撃を強めており、レバノン保健省の集計によると、3月2日以降の戦闘で3400人以上が死亡し、10000人以上が負傷している。一方、イスラエル側も兵士24人と民間人4人の犠牲者を出している。イランのアッバス・アラグチ外務大臣は「休戦はレバノンを含む全戦線での休戦であり、いかなる戦線での違反も全戦線の違反を意味する」と警告し、エスマーイル・バガエイ報道官も米国の矛盾したメッセージとイスラエルの軍事行動が交渉の遅延要因であると指摘した。米国側ではドナルド・トランプ大統領が「イランは本当に合意を望んでいる」と主張する一方、マリオ・ルビオ国務長官がヒズボラの攻撃停止とイスラエルのベイルート攻撃自粛をセットにした段階的エスカレーション回避案を提示するなど、外交努力は平行線をたどっている。
この情勢悪化は地域経済にも影響を及ぼしており、ホルムズ海峡の実質的な封鎖が長引く中で原油価格が上昇を続けている。国際社会からは欧州連合(EU)やサウジアラビアがイスラエルの行動を非難し、外交解決を促す声が高まっている。米イラン間の間接交渉は非核化や資産凍結解除などの核心課題を控える中、レバノンでの武力衝突の即時停止が和平プロセスの成否を分ける分岐点となっている。