シンガポールで開催されたアジア最高峰の安全保障フォーラム「シャングリラ・ディローグ」において、各国の防衛・外交トップが地域情勢を巡って激しい意見交換を行った。日本の小泉進次郎防衛大臣は中国側から向けられた「新軍国主義」の批判を明確に否定し、国際法に基づく防衛力整備は地域平和に貢献すると主張。一方で、米国防長官ピート・ヘグセスはトランプ政権の対中姿勢を背景に、インド太平洋地域における「安定した均衡」の実現を優先課題と位置づけ、同盟国への防衛費増額を改めて求めた。
日中関係の悪化は安全保障議論の核心をなしている。高市早苗首相が昨年11月、台湾海峡での紛争を「存立危機事態」と位置づけ自衛隊の介入可能性を示唆した発言が中国の激しい反発を招き、両国関係は近年最低の水準に陥っている。小泉大臣は演説で、日本が核兵器や戦略爆撃機を保有していない事実を指摘し、中国の透明性に欠ける軍拡と軍事活動への懸念を表明した。また、専門家は両国間の実務的な対話チャネルが不足していることを指摘し、レアアースなど重要鉱物の輸出管理を巡る貿易関係の悪化も懸念材料となっている。
米国は地域安全保障の枠組み再編を推進する一方、同盟国の財政現実とのジレンマも浮上している。ヘグセス長官は北京でのトランプ大統領と習主席の会談を踏まえ、中国の軍事的覇権を容認しない方針を維持しつつも、競争は合理的な範囲内に留める「建設的な戦略的安定」を強調。これに対し、ニュージーランドのニコラ・ウィリス財務大臣は、米国の要求する防衛費水準向上に対して「国庫に膨大な資金があるわけではない」と財政難を明かし、現行の目標達成にも困難が伴うとの見解を示した。
安全保障環境の複雑化に伴い、多国間協議の場では実利的な国家利益の調整が優先される傾向が強まっている。中国国防相董軍氏が2年連続で欠席する中、対話の機会を失うことへの懸念も示された。地域諸国は軍事能力の向上と外交的対話の両立を迫られており、透明性の確保と危機管理メカニズムの構築が、東アジアおよびインド太平洋地域の長期的な平和と繁栄にとって不可欠な課題となっている。